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認知症の介助の仕方

認知症を理解し、適切に対応しましょう

認知症の症状は、人によってさまざま。介護する家族にとっては、戸惑うことも多いでしょう。でも、「どうしてできないの!」などと叱っても問題は解決しないばかりか、逆効果になることも。介護のコツをつかみ、介護者の負担も軽くなる方法を探していきましょう。

●基本の考え方

認知症の介護は、
1.認知症という病気を正しく理解すること、が基本です。
認知症は、記憶や見当識などの知的機能が低下する病気ですから、「こんなことも忘れちゃったの?」などと責めても意味のないことです。認知症は「ぼけても心は生きている」と言われるように、かなり進んだ状態でも、感情の動きは残っています。

2.本人のプライドを傷つけないよう、あたたかい気持ちで接するようこころがけましょう。
とはいっても、認知症の人の行動には戸惑うことも多いでしょう。一見、奇異に思える行動も、本人にとっては意味があることを知っておいてください。何をしようとしてこうなったのかを考えていくと、解決する問題も少なくありません。そして、

3.本人のできることと、できないことをよく理解し、「できることは本人にしてもらうようにしましょう。
これは、認知症にかぎらず、すべての介護にあてはまることです。注意すべきことは、認知症の人は、自分で体の変調を訴えたり、事故や身の危険を予測して行動したりすることができにくくなることです。

4.周囲にいる人が日頃から食欲や歩き方、体調の変化などに気を配り、身の回りに危険なものがないか注意しておくようにしましょう。
また、介護は長期戦になりがちです。

5.介護者自身が健康な状態でいられるように、体調を管理することを忘れないでください
介護者が疲れていたり、精神的なストレスを抱え込んだ状態では、よい介護はできません。介護者のイライラを敏感に感じ取り、それが問題行動を起こすきっかけとなる、悪循環を生み出すこともあるのです。

6.ときには息抜きをすることが大切です。
介護保険サービスを上手に活用しながら、専門的な医療のサポートを受けたり、地域の協力を得ながら、介護者が息抜きをすることがとても大切なことです。

●食べたことを忘れる

いま食べたばかりなのに、「ご飯はまだ?」と食事を要求したり、近所で「うちの嫁は何も食べさせてくれない」などと言いまわったり、という話をよく耳にします。

認知症の人は、数分前の記憶も忘れてしまうことがあるので、おなかがいっぱいになっていても、「食べていない」と言うのです。そんなときには、頭ごなしに「いま、食べたばかりでしょ」などと言い返すのはよくありません。食べた後もしばらく食器を片づけないでおき、食べたことを確認してもらうのも方法です。「食事は○時ですから、できるまで散歩に行きましょうか」などと、別のことに関心を向けたり、「お茶を飲んで待っていてね」と言って気を紛らわせるのもよいかもしれません。

それでも食事を要求する場合は、カロリーの少ないおやつなどを用意してあげたるのもよいでしょう。

また、食事の量には注意しましょう。認知症になると、脳の抑制力が低下するので、あればあるだけ食べてしまう人がいます。お皿に盛るときには、小皿に少しずつ、適度な量だけ盛りつけるようにしましょう。

●失禁

失禁するようになったときには、まず原因を考えてみましょう。失禁の原因には、足が不自由でトイレまで行くのに時間がかかる場合や、トイレの場所がわからない場合、下着を下ろしにくい、下ろし方がわからない場合、また膀胱炎や前立腺肥大など身体的な病気が原因していることも考えられます。

もし、トイレの場所がわからないのが原因なら、
1.トイレまでの道順を示し、トイレのドアに「便所」「トイレ」などと大きく張り紙をしたり、
2.そわそわしはじめたらトイレまで連れていくのも方法です。
下着が下ろしにくいようなら、サイズの大きなものに変えることで、解決することもあるのです。

排泄の問題は、本人の尊厳にかかわる問題です。認知症の人のプライドを傷つけないように注意しましょう。汚れた下着をタンスの奥にしまい込む人がいますが、これは「恥ずかしいことをしてしまった、見つからないようにしよう」という気持ちが背景にあるからです。もし、タンスや押入の中から汚れ物が見つかっても、「これは何?」と問いつめるのではなく、気づかれないように処理し、なぜ失禁するのか、原因に合った対処法を考えてください。

また、おむつをいやがる人もいます。しかし、一度拒否されたとしても、おむつの形や製品による微妙に違うはき心地によっては、受け入れてくれることがあるので、根気よくすすめてみてはいかがでしょうか。

●着替えられない

夏にセーターを着こんだり、冬に半袖を着て平気でいたりすることがあります。これは、見当識が障害され、いまが何の季節かわからなくなったためです。また、ブラウスの上から下着をかぶったり、ボタンをかけ違ったりすることも珍しくありません。

だからといって、介護者がすべて着替えさせてしまうのもよくありません。一緒に服を選んだり、着る順番に服を重ねておきながら、ときには、言葉で丁寧に着る順番を示してあげ、できるだけ自分で着てもらうようにしましょう。多少時間がかかっても、ゆったりとした気持ちで見守ってください。

●もの盗られ妄想

財布や通帳をなくさないようにしまいこみ、しまった場所やしまったことを忘れてしまうことがあります。「財布がない」といって、家中を探し回り、見つからないと、たいていは身近な家族が犯人扱いされます。「泥棒が入った」と言って、警察に被害届を出す例も珍しくはありません。

こうした「もの盗られ妄想」は、自分が大切なものをなくすはずがないという思いと、見つからないという現実に折り合いをつけるために生じるといわれています。

身に覚えのないことで疑われた家族は、不愉快な思いをするかもしれませんが、「病気が言わせたのだ」と受け流すことが大切です。「私が盗むわけないじゃない!」などと言い返すのではなく、本人が困っている気持ちを受け止め、一緒に探してあげましょう。

何度も「財布がない」と繰り返す場合は、介護者が保管しておき、「財布がない」と言い出したら、すぐに本人に見せて、中身を確認してもらうと安心することが多いようです。

基本的には、本人が持つのは最低限のお金だけにし、大切な通帳や証書は、家族が保管しておくようにすると、金銭トラブルを防ぐことにつながります。

●夜中に起きて動き出す

夜中に起きて、部屋の中を動きまわったり、着替えて「会社に行く」などといって出ていこうとすることがあります。

こうした不眠や、昼と夜との取り違えは、目が覚めたときに自分がどこにいるのか、いまが何時なのかわからないために起こります。そのため本人は不安や混乱に陥り、寝ている家族を起こしたり、家から出ていこうとする、といった問題行動をとるのです。

睡眠は脳の休息のために重要なものですが、眠り浅い状況が続くと、ますます判断力が低下し、幻覚や妄想などが生じやすくなります。夜中に「知らない人が入ってきた」と大声を出して興奮する例も少なくありません。

夜、きちんと眠ってもらうには、昼間、適度に運動することが大切。散歩に出かける、入浴する、家事の手伝いをしてもらう、デイサービスを利用する、長時間の昼寝は避けるなど、昼間の生活を工夫してみましょう。また、空腹感や尿意などで、夜中に目が覚める場合があるので、夕食や寝る前の水分の取り方にも注意してください。

それでも長引くようなら、医師に相談し、薬物療法を受けたほうがよいでしょう。少量の精神安定剤で改善することがあります。

●徘徊

ひとくちに徘徊といっても、いろいろなパターンがあります。たとえば、よく知っている近所を散歩していて、帰り道がわからなくなって道に迷う場合。生まれた家や若い頃に働いていた仕事場、知り合いの家、お墓参りなどに行こうとする場合。また、夕方になると、「帰ります」と言って出ていこうとする「夕暮れ症候群」は、具体的な自分の家や生まれた家に帰りたいという場合もあれば、心の安らぎが得られる抽象的な家≠ノ帰りたいという場合もあり、それが徘徊につながることもあります。

徘徊がある場合は、いつ(時間帯)どんな状況で起こりやすいか、どこに行こうとしているかのか、を知っておくことが大切です。また、一度は徘徊についていき、どんな行動をとるのか、観察しておくのもよいでしょう。なかには、自分で切符を買い、電車やバスを使って、遠くまで行ってしまう人もいます。

徘徊を防ぐには、どこかに「行きたい」という欲求を満たしてあげる方法があります。一緒に散歩に出かけたり、行きたがる場所に連れ出したら、あまり徘徊しなくなったという例もあります。

また、出ていこうとするときに、関心を別のものに向けさせる方法もあります。「出掛けちゃだめ」と閉じこめるのではなく、「おいしいお菓子があるので、一緒に食べましょう」とか、「大好きな相撲中継が始まりましたよ」と、本人が好きなもので誘ってみると案外うまくいきます。

ちょっと目を離した隙に出ていってしまうような場合は、玄関にカギをかけたり、センサーを設置しておくのも方法です。また、近所の人には、一人で歩いているところを見かけたら、連絡してもらうなど、協力を得られればよいですね。

また、地域によって、徘徊老人を見守るネットワークがあります。あらかじめお住まいの地域にはどんなネットワークがあるかを調べておき、いざというときにすぐ活用できるようにしておきましょう。 本人の衣服に、住所、氏名、連絡先がわかる名札を縫いつけておいたり、バッグやお守りの中などに名刺を入れておくのも方法です。

●もの集め

認知症の症状に、もの集め、収集癖があります。集めるものは、衣類やスリッパ、植木、がらくたやゴミ、食べ残し、石、ひも、袋・・・など人によってさまざま。他人のものでも、不潔なものでもかまわずに大量に集めてきては、タンスや布団の下などにしまいこみます。

認知症の人がもの集めをするのは、ものの価値判断ができなくなったためとも言われますが、その根底には、心の空虚感や寂しさがあり、ものを集めることによって寂しい心を補いたいという思いがあると考えられています。

したがって、ほかの人にとっては意味のないものでも、本人にとっては大切なものなのです。「汚いから」などと言って叱ったり、片づけてしまうのはやめましょう。ただし、放っておくと腐ってしまうもの、不衛生なもの、危険なものは、気づかれないように少しずつ片づけます。他人のものも、そっと返しておくとよいでしょう。

もの集めは、たいていの場合一時的なもので、それほど長くは続きません。

●作り話をする、幻覚をみる

「うちの嫁は男と浮気をしている」「息子からいじめられている」などまったく事実ではないことを話し、周囲を混乱させることがあります。認知症であることを知らない人は、まことしやかな話しぶりに、真に受けてしまいます。

認知症の人が、ありもしない作り話をするのは、その人にうらみがあって、困らせようとしているわけではありません。自分の中で欠落した記憶と、現実とのつじつまを合わせようと、話を作りあげ、それを現実だと思いこむためです。

「どうしてそんな嘘を言うの」などと問いつめるのではなく、やさしく接しながら、本人が不安に思っていることを解決してあげられたらよいですね。

また、虫や人影など、実際には存在しないものが見えること(幻覚)もあります。幻覚を否定するよりも、幻覚に怯える本人の気持ちを受け止め、手を握ってあげたり、体に触れて安心感を与えてあげましょう。

服薬している人は、薬が原因で起こる場合もあるので、医師に相談することが大切です。また、視力の低下とも関係があるので、眼科医に相談したり、部屋の照明を明るくするなどの工夫も必要です。

●不潔行為

おむつの中に手を入れたり、排便中に便をさわり、あちこちに便をなすりつけることがあります。弄便(ルビ ろうべん)といいます。

介護者にとっては、ショッキングな行為ですが、本人は「便をいじろう」と思ってやっているわけではありません。

多くの場合、便による不快感やおむつによる刺激が気になって、手で触ったり、下着やおむつの中に手に入れてしまうために起こります。そして、周囲の壁や衣服に便をなすりつけるのは、大便で汚れた手を拭おうとしただけなのです。

ふだんから排泄のリズムをつかみ、できるだけトイレに誘ってみたり、排泄したらすぐにおむつを交換するようにしたいものです。また、おむつかぶれなどがないかチェックし、刺激の少ない下着やおむつに変えるのも方法です。

●暴力を振るう

認知症を発症する前は、おだやかな性格の人だったのに、暴言を吐いたり、暴力を振るうようになったという例があります。また、以前から短気で暴力的だった人が、発症してからその傾向がいっそう強まったという例もあります。いずれにしても、知的機能が低下すると、状況を判断して理性的に振る舞ったり、感情を抑制することがむずかしくなります。

暴力や暴言は、何かを嫌がっているときに起こることが多いようです。介護者はよかれと思ってお世話をしますが、本人にとっては、必ずしもそうではありません。入りたくないときにお風呂に入れられたり、行きたくもないのにトイレに連れて行かれたりすることへの拒否が、やむにやまれず暴力という形としてあらわれる場合があります。

大切なのは、まず介護者の身を守ること。そして、暴力や興奮がおさまったら、ゆったりと穏やかな気持ちで接します。入浴やトイレは、本人が自分から行きたいと思うようなタイミングで、働きかけてみるとよいかもしれません。

しかし、具体的な理由ではなく、本人の抱える不安やいらだちが、暴力という形になる場合もあります。すべての人に暴力を振るうのでなければ、ホームヘルパーやほかの家族に対応してもらうのも方法です。

もっとも避けたいのは、暴力を暴力でやめさせることです。

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